企業をBPMで変革するのは、どんな人?

みなさま、こんにちは。ペンネーム hijk です。

筆者は、十年来、「BPMで日本を元気に!」を合言葉に、BPMに本気で取り組んできました。今回のブログでは、BPMそのものではなく、BPMの普及・展開・徹底をリードするのは、「どんな人物」「どんな個人」なのか、筆者なりの経験から振り返ってみようと思います。

 

 

1.全ての変革リーダーに求められる性質

先ず、BPMに限らす、変革リーダーには、どのような性質が求められるのかを考えてみます。常々思うのは、実質的な変革リーダーは「一人」なのだということです。勿論、変革は、経営の意志・予算のやりくり・技術面での工夫など、様々な要素が整合される必要がありますし、チームワークで推進し、多くの人々の努力が結集されて、初めて現実のものとなります。それでも、一般論ではなく、いま正に自組織で取り組むべき、大きな変革の方向性を編み出すのは、「たった一人の人間」だと思うのです。

 自組織の置かれた経営環境・厳しい事業状況・目まぐるしく変わるIT技術、それらを、「たった一人の人間の脳」(重さ約1.5kg、神経細胞の数1,000億個)に、ぎゅうぎゅうに詰め込む。幾晩も悩みに悩んで、ある日の朝に「これしかない」という方向性が出る。それは、意外にも平凡だったり、当然のことのように響くような内容であることが多いのですが、平易な言葉で正しい方向を正確に射抜いた目標であり、不思議なほど多くの人の腹に落ちる方針であり、それが何年にも亙り揺ぎの無い羅針盤になります。そして、その悩み抜いた「たった一人の人間」の『熱』のこもった語り口から、誰しもが変革に納得し、改革の熱気が伝播していくのだと思います。

 変革リーダーは、自ら立ち上がったのかも知れませんし、トップからの指示で任命されたのかも知れません。しかし、いずれの場合でも、変革リーダーとなった以上は、変革の出発点としての『熱源』になること。これが何よりも重要なことだと思います。

 

2.BPMの変革リーダーに求められる性質

一方で、企業をBPMで変革するリーダーには、『熱源』であるほかに、いくつかの性質が求められるように思います。

 BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)は、その名の通り「プロセス」を扱う方法論です。プロセスの可視化・測定・改善・標準化・自動化、その全てに亙るセオリー・ノウハウ・ツールなどから成る、非常に幅の広い学問です(図 1 BPMの構成要素)。組織表・ルールブック・人材・ITシステムなどと違い、目には見えない「プロセス」を、何とか見えるように可視化し、測り、改善し、標準化し、一部を自動化していく。そこでは、抽象的に考える力、理詰めの思考力が、本質的に重要になります。

図1

(図 1 BPMの構成要素)

ですから、企業をBPMで変革するリーダーは、科学的・合理的なアプローチが得意であることが求められると思います。自分自身にそのような力が足りないとしたら、得意な人を引き込んで、緊密に連携する必要があるでしょう。また、最初からBPMの広範な知識エリアの全てに精通している人はいないので、組織のBPM成熟度の向上に合わせて、逐次最適な技術を手渡してくれるコンサルタントとの二人三脚も重要になるでしょう。

 ところで、BPMは、全ての業務領域に有効な手法です。営業・製造・調達・経理・人事など、企業のあらゆる業務活動にはプロセスが存在し、その全てがBPMによって継続的に改善可能です(図 2 企業に存在するプロセス)。一方で、それら全ての業務領域に精通している変革リーダーなど、まずいないと思われます。BPMという手法を普及・展開・徹底するにあたり、現場からは「なぜそんな面倒なことをしないといけないんだ」「私の業務は私が一番よく分かっている、お前に何が分かる」と抵抗を受けることもあるかと思います。現場のことは現場が一番よく分かっている。それはその通りです。ですから、変革リーダは、常に現場に対するリスペクトを持ち、一緒に改革を進めさせて頂く、という気持ちを持つと良いと思います。決して「上から目線」になってはいけません。

図2

(図 2 企業に存在するプロセス)

BPMによる変革リーダー」は、その肩書き一つで、企業内の全ての現場に入り込んでいくことができる。各業務領域の専門家に会える。そこでリーダー自身も様々なことを学ぶことができる。そのことを喜べるような、知的好奇心の旺盛な人物が、BPMによる変革リーダーに向いている、と言えるでしょう。

 また、プロセスは、組織構造と制度・ルールの制約を受けて設計され、人とITはプロセスに従うべきものです(図 3 企業の構造とプロセスの関係)。必然的に、プロセスを可視化・測定・改善・標準化・自動化するには、組織構造や制度・ルールの改訂、人材育成やITの高度化など、企業のありとあらゆる経営要素と関わっていくことになります。「組織論は苦手」「制度・ルールは面倒なので手を触れたくない」「人材育成は他の人がやってくれればいい」「ITには詳しくない」といった苦手意識があると、BPMの推進自体が歪んだものになりかねません。

図3

(図 3 企業の構造とプロセスの関係)

このように、BPMによる変革を推進するリーダーは、非常に複雑なシガラミの中に放り込まれることになります。経営・管理・現場の全てに関わっていく必要があります。ですから、スペシャリスト(専門技術)よりはジェネラリスト(抽象思考)志向で、大きな方向性を見失わないアーキテクトとしての能力が求められると思います。細かいことでいちいち右往左往していては、BPMによる企業の変革はできません。大切なのは、プロセスを継続的に改善し続けることで、企業が顧客価値を最大化することです。自社の組織・制度・人材・ITが優れているか否か(自己満足できるかどうか)は、二の次です。

 このように、BPMの適用は企業変革そのものですから、一過性のシステム導入プロジェクトなどと違い、時間をかけて粘り強く進めていくことになります。カンフル剤というよりは、漢方薬ですね。これだけの大変なことを続けるのですから、変革リーダーは、BPMという方法論に腹落ちしていること、経験から「これだ!」と感じていることが重要です。そうでなければ長続きしません。学べば学ぶほど、BPMが好きで好きでたまらなくなる。それが、やりぬく力、熱の源になります。大丈夫です。BPMには、それだけの魅力があります。扉はいつでも開かれています。

 一方で、経営課題は日々目まぐるしく変わり、BPMに対する経営の理解や共感も、いつまでも同じとは限りません。BPMによる企業変革のリーダー自身が、経営との接点を持ち、成果と継続の必要性を訴え続けるのが理想ですが、なかなかそうもいかないかも知れません。できれば、経営層の中に、BPMに深い理解を示し、変革リーダを支えるスポンサーがいることが望まれます。

3.これからの変革の鍵は、女性活躍推進?

以上、BPMという方法論の特徴から、BPMによる企業の変革リーダーに求められる性質を見てきました。

  • 科学的・合理的で抽象思考が得意な人
  • あらゆる業務領域に入り込み、現場をリスペクトし、学びあえる人
  • 戦略・組織・制度・人材・ITをバランスよく知るジェネラリスト

しかし、それだけで本当に改革が進むのでしょうか。実際に改革を進めようとすると、改革を望まない中間管理職の抵抗に遭い、何も進まなくなるということが往々にしてあります。定年に近い男性の中間管理職は、効率化によって仕事が無くなると、新たに取り組めることが無いと感じていて、早めに家に帰っても居場所がなく、そのことを自覚したくないから、非効率な仕事を黙々と続けている。改革に表立って反対はしないが、既得権益を使い狡猾に牛歩戦術を採り続ける。そんな場面も少なくありません。

 一方で、女性は改革に向いている、と良く言われます。女性は会社員であると同時に、イチ消費者としての鋭い感性も持っています。変わらなければならないと共感すれば、自らを変えることに躊躇しません。理論ばかりでなく、感情面でも、改革の熱を伝えていくことが得意です。変革においては、今後益々、女性の活躍が欠かせなくなるでしょう。

  • 男性は「理」で納得すれば動く。一方で「情」への配慮が不足しがち。
  • 女性は「情」で納得すれば動く。一方で「理」の設計が漏れがち。

 どちらが良いか、ということでなく、企業において男性と女性が共に働くことは前提条件であり、特に社会環境が目まぐるしく変わっていく今後は、企業の中にも多様性を確保しておくことが絶対条件になってきます。変革において、男性と女性がいかにお互いを補完し合うか。日本企業の女性管理職の登用は極めて遅れています。改革リーダこそが、女性の育成や活躍推進を、真剣に考えるべきと思われます。

 「女性優遇」ではなく「女性育成」「女性活躍推進」を、改革のプロセスの中に、どうやって位置づけていくか。日本人男性である私には、とても難しいことに感じます。しかし、女性の改革リーダを積極的に育てない企業は、生き残れないでしょう。これについては、今からの研究課題とし、継続的に取り組んでいきたいと思います。

 

以上●

図4

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