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「結局失敗?」これまでの働き方改革を振り返る

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「2017年は働き方改革元年なのでは?」と思うほど昨年来から働き方改革に関するニュースや情報があふれ、現在進行形で議論が進められています。

今後は、長時間労働の規制や柔軟な働き方の実現に向けた労働基準法の改正が企業の働き方改革の取り組みにどのような影響を与えるかが注目点になるかと思います。 

「本年、働き方改革に挑戦いたします。正規、非正規、雇用形態にかかわらず、昇給や研修、福利厚生など、不合理な待遇差を是正することで、多様な働き方を自由に選択できるようにします。長時間労働の上限規制を導入し、長時間労働の慣行を断ち切ります。ワーク・ライフ・バランスを確保し、誰もが働きやすい環境を整えてまいります。70年に及ぶ労働基準法の歴史において、正に歴史的な大改革に挑戦する。」

※安倍内閣総理大臣年頭記者会見(平成30年1月4日)より抜粋

2017年3月に政府より、国の最大のチャレンジとして「働き方改革実行計画」が発表されたことで、働き方改革を 優先課題とする企業も増加したと思います。しかし、その発表からもうすぐ1年が経とうとしている今、各企業の働き方改革に対する現状は「暫定的な取り組みの働き方改革」で終わってしまい、取り組みに対する停滞感や、さまざまな疑問が生まれている企業も多いのではないかと感じました。

このような状況を踏まえて、本年度も働き方改革を進めていくにあたり、現状の働き方改革に関する実態を  一度整理すると共に、企業におけるこれまでの働き方改革の失敗と成功の実情をまとめていきたいと思います。

2017年までの企業の働き方改革への取り組み

厚生労働省が発表したデータを基に昨年の企業の「働き方改革の取り組み」を振り返ります。

▼現在までに実施した取り組み(図1)

※労働経済動向調査(平成29年11月)の概況より引用

▼今後実施する予定の取り組み(図2)

※労働経済動向調査(平成29年11月)の概況より引用

図1、図2の赤枠部分を見てみると、「現在までに実施した取り組み」「今後実施する予定の取り組み」で以下の4つの取り組みに割合が集中していることがわかります。

  • 「長時間労働 削減のための労働時間管理の強化」   (図1:60%→図2:71%)
  • 「休暇取得の促進」               (図1:54%→図2:64%)
  • 「育児・介護中の職員が働きやすいような環境整備」(図1:46%→図2:53%)
  • 「ノー残業デーの実施」             (図1:41%→図2:46%)

最も取り組まれている「長時間労働削減のための労働時間管理の強化」は企業の生産性向上を考えていく上で 避けては通れない重要な課題でもあります。

昨年は長時間労働による過労死、自殺などのニュースが取り上げられるなど、今まで問題視されてきた日本の 残業文化の悪習に対して、国も法改正による「時間外労働の上限規制」を今後取り組もうとしています。この残業規制の適用は大企業が来年4月、中小企業は長時間労働を見直す準備期間として1年延期となり再来年に予定されており、各社対応が急務となっています。

企業においては、昨年は労働力不足の解消、多様な働き方の確立のためのさまざまな取り組みが登場しました。具体的な取り組みの内容として、

  • ITを活用した非効率な業務の効率化、業務プロセス改善へのアプローチ
  • 直行直帰、在宅勤務、テレワークなどの実施による多様な働き方実現のための環境づくり
  • 自由度の高くなった多様化する働き方に合わせた人事・評価制度の見直し

これまでの働き方改革の実態とまとめ

働き方改革を目的にさまざまな取り組みが行われる一方で、根本的な課題解決に至らず新たな課題が出てきています。振り返りの意味も込めて整理したいと思います。

働く時間が短くなれば労働生産性が上がるわけではない

長時間労働が当たり前となっている日本において長時間労働の是正は必要な取り組みですが、残業削減を掲げた取り組みが行われるも「サービス残業が持ち帰り残業になっただけ…」というケースがニュースにも取り上げられました。

残業で賄おうとする姿勢に対しても問題はありますが、日本の長時間労働の真の原因は生産性の低い働き方にあります。日米の生産性の比率62:100を見ても、いかに生産性が低い働き方をしているかが伺えます。
先述した法改正による「時間外労働の上限規制」は生産性向上に対しての効果は期待できません。今後、法的に残業時間の上限が設けられた場合、まだ働き方改革に対して前向きでない企業も含め、生産性向上への取組が急務となっていくのではないでしょうか。

定型業務のIT化は有効な手段のひとつ。だが苦戦する企業が続出

生産性向上の取り組みとして、定型業務をRPAで自動化を検討する企業が非常に増えています。
労働力不足解消への対策にロボットやAIの活用することは効果的なアプローチです。RPAはスモールスタートで始めることができるのも魅力のひとつです。

しかし、現時点では残念ながら成功例をあまり耳にしません。なぜでしょうか。
原因は、実施企業の多くがIT部門または事業部門で別々に試験採用しているからです。
IT部門だけで実施すると業務がわからないので機能比較レベルの調査で検証が終了してしまいがちです。

また、事業部門だけで実施すると、多くのRPA製品は、利用するのにまだIT部門の方のスキルが必要な為うまく使いこなせず、仮に作成できたとしても非常に非効率なロボができあがってしまい業務要件をみたせない。このような現実が今RPA検討企業で続出しています。会社、または組織全体での業務改善という視点を欠いてしまうと場当たり的な取り組みで終わってしまいます。

生産性向上、業務改善を目的としたRPA導入には、組織全体の業務改善として取り組む事が肝要です。
まず事業部門とIT部門が連携する。事業部門は業務要件をIT部門に伝える。IT部門は、業務要件を機能要件にまで落とし込み、RPAが苦手な機能要件にはそれを補うIT手段と組み合わせて自動化する、

この流れを作ることが、働き方改革を目的とした、生産性向上、業務改善が実現するための近道と考えます。

取り組みの模索ばかりで意識改革が進んでいない

企業における働き方改革の取り組みが停滞するケースの特徴として、「企業のための働き方改革」に固執し「社員のための働き方改革」という視点をないがしろにされていることが挙げられます。

ここでいう「企業のための働き方改革」は無駄の削減、生産性向上という観点です。今後、労働時間は減る中で今まで通りか、それ以上の成果を出していかねばならないため業務の効率化、無駄の削減を通じた生産性の確保が企業にとっては最優先になります。働き方改革の一環として間違ってはいませんがこの活動は働き方を変えていくための手段に過ぎません。

「社員の働き方改革」というのは、生産性を向上するにあたり

  • 社員が活き活きと働くことができる環境
  • 育児や介護を理由に働きたくても退職せざるを得ない人、外国人労働者などの多様な人材が活躍できる環境

などの労働環境を作ることができているかという観点です。
働き方改革の取り組みでこの観点が抜け落ちてしまうと効率化一辺倒の取り組みで社員が疲弊してしまい、やらされ感しか残りません。賃金が低くただ成果に追われるような働きづらい環境では優秀な人材の確保や離職率低減という面においてもデメリットでしかありません。

残業時間を問題に挙げるのではなく、残業に陥っている社員の業務に問題意識を持ち、何が痛みとなっているのかを考えなければ、働き方は変わらないままだと思います。

  • 有給休暇はあってないようなもの。使うと非難される
  • 早く帰れるようになったけど働く場所が変わっただけ
  • 働き方改革の取り組みをしているが社員には喜ぶ顔がない

このような状態に陥っている企業こそ生産性向上にあたり根本的に働き方を変えていく必要があると思います。「企業」と「現場の社員」でそれぞれ働き方改革に対する観点も捉え方も異なっていることを踏まえて、働き方改革の取り組みを考え続けていく必要があります。

最後に

今年度も働き方改革の動向に注目しながら各社でも取り組みが続いてきます。

「生産性を上げて、働き手に合わせた多様な働き方」という困難な目標を実現するためには新しい考え方や取り組みも時には受け入れて考え続けていくしかありません。

企業の新たな取り組みにお役に立てるよう、弊社でも引き続き最新の情報をお届けできるよう精進いたします。

今回は以上になります。

「2017年は働き方改革元年なのでは?」と思うほど昨年来から働き方改革に関するニュースや情報があふれ、現在進行形で議論が進められています。

今後は、長時間労働の規制や柔軟な働き方の実現に向けた労働基準法の改正が企業の働き方改革の取り組みにどのような影響を与えるかが注目点になるかと思います。 

「本年、働き方改革に挑戦いたします。正規、非正規、雇用形態にかかわらず、昇給や研修、福利厚生など、不合理な待遇差を是正することで、多様な働き方を自由に選択できるようにします。長時間労働の上限規制を導入し、長時間労働の慣行を断ち切ります。ワーク・ライフ・バランスを確保し、誰もが働きやすい環境を整えてまいります。70年に及ぶ労働基準法の歴史において、正に歴史的な大改革に挑戦する。」

※安倍内閣総理大臣年頭記者会見(平成30年1月4日)より抜粋

昨年3月に政府より、国の最大のチャレンジとして「働き方改革実行計画」が発表されたことで、働き方改革を 優先課題とする企業も増加したと思います。しかし、その発表からもうすぐ1年が経とうとしている今、各企業の働き方改革に対する現状は「暫定的な取り組みの働き方改革」で終わってしまい、取り組みに対する停滞感や、さまざまな疑問が生まれている企業も多いのではないかと感じました。

このような状況を踏まえて、本年度も働き方改革を進めていくにあたり、現状の働き方改革に関する実態を  一度整理すると共に、企業におけるこれまでの働き方改革の失敗と成功の実情をまとめていきたいと思います。

2017年までの企業の働き方改革への取り組み

厚生労働省が発表したデータを基に昨年の企業の「働き方改革の取り組み」を振り返ります。

▼現在までに実施した取り組み(図1)

※労働経済動向調査(平成29年11月)の概況より引用

▼今後実施する予定の取り組み(図2)

※労働経済動向調査(平成29年11月)の概況より引用

図1、図2の赤枠部分を見てみると、「現在までに実施した取り組み」「今後実施する予定の取り組み」で以下の4つの取り組みに割合が集中していることがわかります。

  • 「長時間労働 削減のための労働時間管理の強化」   (図1:60%→図2:71%)
  • 「休暇取得の促進」               (図1:54%→図2:64%)
  • 「育児・介護中の職員が働きやすいような環境整備」(図1:46%→図2:53%)
  • 「ノー残業デーの実施」             (図1:41%→図2:46%)

最も取り組まれている「長時間労働削減のための労働時間管理の強化」は企業の生産性向上を考えていく上で 避けては通れない重要な課題でもあります。

昨年は長時間労働による過労死、自殺などのニュースが取り上げられるなど、今まで問題視されてきた日本の 残業文化の悪習に対して、国も法改正による「時間外労働の上限規制」を今後取り組もうとしています。この残業規制の適用は大企業が来年4月、中小企業は長時間労働を見直す準備期間として1年延期となり再来年に予定されており、各社対応が急務となっています。

企業においては、昨年は労働力不足の解消、多様な働き方の確立のためのさまざまな取り組みが登場しました。具体的な取り組みの内容として、

  • ITを活用した非効率な業務の効率化、業務プロセス改善へのアプローチ
  • 直行直帰、在宅勤務、テレワークなどの実施による多様な働き方実現のための環境づくり
  • 自由度の高くなった多様化する働き方に合わせた人事・評価制度の見直し

これまでの働き方改革の実態とまとめ

働き方改革を目的にさまざまな取り組みが行われる一方で、根本的な課題解決に至らず新たな課題が出てきています。振り返りの意味も込めて整理したいと思います。

働く時間が短くなれば労働生産性が上がるわけではない

長時間労働が当たり前となっている日本において長時間労働の是正は必要な取り組みですが、残業削減を掲げた取り組みが行われるも「サービス残業が持ち帰り残業になっただけ…」というケースがニュースにも取り上げられました。

残業で賄おうとする姿勢に対しても問題はありますが、日本の長時間労働の真の原因は生産性の低い働き方にあります。日米の生産性の比率62:100を見ても、いかに生産性が低い働き方をしているかが伺えます。
先述した法改正による「時間外労働の上限規制」は生産性向上に対しての効果は期待できません。今後、法的に残業時間の上限が設けられた場合、まだ働き方改革に対して前向きでない企業も含め、生産性向上への取組が急務となっていくのではないでしょうか。

定型業務のIT化は有効な手段のひとつ。だが苦戦する企業が続出

生産性向上の取り組みとして、定型業務をRPAで自動化を検討する企業が非常に増えています。
労働力不足解消への対策にロボットやAIの活用することは効果的なアプローチです。RPAはスモールスタートで始めることができるのも魅力のひとつです。

しかし、現時点では残念ながら成功例をあまり耳にしません。なぜでしょうか。
原因は、実施企業の多くがIT部門または事業部門で別々に試験採用しているからです。
IT部門だけで実施すると業務がわからないので機能比較レベルの調査で検証が終了してしまいがちです。

また、事業部門だけで実施すると、多くのRPA製品は、利用するのにまだIT部門の方のスキルが必要な為うまく使いこなせず、仮に作成できたとしても非常に非効率なロボができあがってしまい業務要件をみたせない。このような現実が今RPA検討企業で続出しています。会社、または組織全体での業務改善という視点を欠いてしまうと場当たり的な取り組みで終わってしまいます。

生産性向上、業務改善を目的としたRPA導入には、組織全体の業務改善として取り組む事が肝要です。
まず事業部門とIT部門が連携する。事業部門は業務要件をIT部門に伝える。IT部門は、業務要件を機能要件にまで落とし込み、RPAが苦手な機能要件にはそれを補うIT手段と組み合わせて自動化する、

この流れを作ることが、働き方改革を目的とした、生産性向上、業務改善が実現するための近道と考えます。

取り組みの模索ばかりで意識改革が進んでいない

企業における働き方改革の取り組みが停滞するケースの特徴として、「企業のための働き方改革」に固執し「社員のための働き方改革」という視点をないがしろにされていることが挙げられます。

ここでいう「企業のための働き方改革」は無駄の削減、生産性向上という観点です。今後、労働時間は減る中で今まで通りか、それ以上の成果を出していかねばならないため業務の効率化、無駄の削減を通じた生産性の確保が企業にとっては最優先になります。働き方改革の一環として間違ってはいませんがこの活動は働き方を変えていくための手段に過ぎません。

「社員の働き方改革」というのは、生産性を向上するにあたり

  • 社員が活き活きと働くことができる環境
  • 育児や介護を理由に働きたくても退職せざるを得ない人、外国人労働者などの多様な人材が活躍できる環境

などの労働環境を作ることができているかという観点です。
働き方改革の取り組みでこの観点が抜け落ちてしまうと効率化一辺倒の取り組みで社員が疲弊してしまい、やらされ感しか残りません。賃金が低くただ成果に追われるような働きづらい環境では優秀な人材の確保や離職率低減という面においてもデメリットでしかありません。

残業時間を問題に挙げるのではなく、残業に陥っている社員の業務に問題意識を持ち、何が痛みとなっているのかを考えなければ、働き方は変わらないままだと思います。

  • 有給休暇はあってないようなもの。使うと非難される
  • 早く帰れるようになったけど働く場所が変わっただけ
  • 働き方改革の取り組みをしているが社員には喜ぶ顔がない

このような状態に陥っている企業こそ生産性向上にあたり根本的に働き方を変えていく必要があると思います。「企業」と「現場の社員」でそれぞれ働き方改革に対する観点も捉え方も異なっていることを踏まえて、働き方改革の取り組みを考え続けていく必要があります。

最後に

今年度も働き方改革の動向に注目しながら各社でも取り組みが続いてきます。

「生産性を上げて、働き手に合わせた多様な働き方」という困難な目標を実現するためには新しい考え方や取り組みも時には受け入れて考え続けていくしかありません。

企業の新たな取り組みにお役に立てるよう、ユニリタグループでも引き続き最新の情報をお届けできるよう精進いたします。

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DXに向けた、働き方改革へアプローチする上で起きることが想定される「働き方改革」の問題と課題を4つのステージとして整理し解説しています。2020年12月に経済産業省が発表した「DX レポート2」にも触れていますので、ぜひご一読ください。

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