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リーンスタートでデジタル変革~情報システム部門変革の鉄則

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イノベーションはTechnolgyとLiberal Artsの交差点で発生する。情報システム部門はその交差点に立たなければならない。技術だけを先行するのではなく、また、業界の常識やビジネスモデルだけを優先するのでもなく、技術と一般常識の間に立つ事で生まれるイノベーションである。そして、それを遂行するのは日本の国が産んだリーンという考え方である。リーンスタートアップは日本人が使ってこそ、効果が発揮されるのではないだろうか?

「ビジネスのアイデアを最新のITで実現して、Technologyの効果を検証しながら、新ビジネスをできるだけ早くマネタイズし、さらに、継続的にビジネスとシステムを改善していく仕組み」

が、リーンスタートアップである。スタートアップと書いてあるからといって、新しい会社を作る必要があるわけではない。新しいビジネスのやり方を、資金的にあまり余裕のない、スタートアップのやり方を真似てやろうという考え方である。

リーンスタートアップは、

「IDEA, BUILD, PRODUCT, MEASURE, DATA, LEARN」

の6つのプロセスをぐるぐる回しながらビジネスを行う。
 

          

ユニリタの成功事例を1つ挙げるなら、動画を使って店舗従業員を教育する、ゴールデンマジック様の事例である。

最近、小学生のyouTuberがいるぐらい、動画を編集して公開することが簡単になった。最初のアイデアは、

「動画が企業の業務に役立たないだろうか?」

であった。この時点で作ったのは、1枚のパワポである。このパワポをいくつかのお客様にヒアリングしてみた。すると、外食業界から反応をもらった。「よし、これはいけるぞ」と。

どうやら、外食業界では、店舗の業務を定義したマニュアルがあるらしい。また、いくつかの動画をDVDで配布をしている企業もある。これを、クラウドでリアルタイムで提供し、双方向のコミュニケーションを行えるようにすれば、これまでの業務マニュアルとは大きく違う効果が得られるのではないか?そこでモックを作り始めた。あくまでモックであるため、ユーザインタフェースの確認にはなるが、実装はされていない。

そして、それをゴールデンマジック社に持っていった。すると、大きな反響があるではないか。そこで、何回かのミーティングを経て、これで行けそうだというものが定義できた。しかし、それはあくまで絵に描いた餅である。実際には、利用をしてもらって、使えるのかを見なければ意味がない。そこで、我々がとった方法は、その頃構築中であったプラットフォームを使って、その上にゴールデンマジック様をはじめとした、外食の店舗向けのコミュニケーションツールを構築することであった。プラットフォームの開発はまだ、ミニマムな機能しかなかった。リーンスタートアップでは、最低限の機能を先にリリースをするという意味で、 

「Minimum Viable Product」

 と呼ばれる。2009年ワールドシリーズでニューヨークヤンキースの松井はMVPを獲得したが、これは「MOST Valuable Player」であった。

 リーンスタートアップでは野球とは違い「MOST」より「MINMUM」を重視する

それは「リーン」が必要だからである。ソフトウェアも実際には使われない「機能」は、無駄な在庫となってしまう。我々のプラットフォームも当時は、プラットプラットフォームとしてはまだ未成熟であったが、ゴールデンマジック様のシステムを構築するのには十分な機能が整っていた。そこで、Webサービス開発チームはこのプラットフォームを使ってサービスを構築した。もちろん、足りない部分はプラットフォームチームに改善を依頼する。この時、Webサービスチーム、プラットフォームチームの両方が使っていた開発方式が、アジャイル開発である。このアジャイル開発では、両チームともに、2週間に1回の開発を行っていた。これを1週間ずらすことで、毎週何らかの開発が終了しており、リリースができるような仕組みを作っていた。

この「プラットフォームのアジャイル開発」と「Webサービスのアジャイル開発」がMVPをを作り上げるには充分に機能をした。通常の開発(ウォータフォール開発)では、最初に決めた要件を曲げることはできない。曲げる場合にはかなりの労力が必要である。

しかし、アジャイル開発では「トレードオフ」が許されている

トレードオフとは、「Aの機能を実装する代わりに同じだけ時間のかかるBの機能の優先度を下げる。あるいは、プロジェクトのスコープがら外す」というアジャイル開発のルールのようなものである。アジャイル開発においてもっとも重要なルールである。このルールが理解されていなくて、「Aの機能をとにかく早く作って欲しい」「はい!わかりました、この優先順位が高いのであれば、とにかくそれを早く作ります」とやってしまうとアジャイル開発は混沌としてしまう。

トレードオフはどちらの方がお金を産む可能性が高いか?と

「価値の判断」

をする行為である。

これはITの課題ではなくビジネスの課題である。つまり、コストをかける価値があるのか?を真剣に考えなければならない。したがって、トレードオフをデシジョンするのは、ビジネス(或いはサービス)オーナーの責任者である。もしも、情報システム部がユーザ部門と一緒になって新しい仕組みを作ろうとしているのであれば、ユーザ部門側の責任者がどの機能を優先してどの機能を後にするのか?というデシジョンに責任を持たせるべきである。

上記のゴールデンマジック様の事例においては、我々は、店舗の従業員(アルバイト)や本部の従業員が使う画面を優先した。そして、動画を登録したり、教育の状況を分析したりする機能は後回しにした。もちろん、サービスのオーナーはユニリタであるため、優先順位の最終デシジョンはユニリタで行った。まず、MVPとして必要であったのは、店舗従業員と本部の人がコミュニケーションをとる機能である。そして、その後レシピ機能を追加した。アルバイトは学生が多く、4月に多くのアルバイトが入るため、その4月の教育に間に合わせなければならなかった。したがって、管理機能は後回しにして、動画でコミュニケーションをする仕組みを優先させたのである。

批判を恐れずに言うと、

「管理機能のない中途半端なサービスをお金に変えた」

のである。「レコーディング機能のないビデオレコーダーを販売して、レコーディング機能は後で提供します」といってるようなものである。オンプレのハードウェアやソフトウェアではできないが、クラウドサービスではそれが出来る。

もちろん、お客様にとってアジャイル開発は初めてでもあるため、2週間に1回のVUPが発生すること、トレードオフが発生することをわかってもらうのには時間がかかったが、2週間毎にシステムがどんどん良くなることを体験してもらうことで、理解を得られるようになった。そして、しばらく運用をしながら、VUPを続けて、今では他社にも販売出来るようになった。

ビジネスをしながらシステムを改善するプロセスは最初はかなりぎこちなくやっていたが、1年間の経験を経て今ではトラブルもなくスムーズにやれるようになっている。

私は企業内でこのプロセスを実現できるのは情報システム部だけではないだろうかと思う。もちろん、システム部の要員が少ない企業では開発の外部委託は必要であるが、このプロセスを理解して、ユーザ部門とやりとりができるのはシステム部門が最適であると考えている。

リーンスタートアップとアジャイル開発は表裏一体であり、ビジネスとシステムの改善プロセスをリンクするにはなくてはならない手法である。

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