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システム運用におけるオペミスが減らない… ~認知行動療法的アプローチでヒューマンエラーを考える~


こんにちは。
今週は、ITサービスマネジメントツールのサポートを担当している山崎から、ITサービスマネジメントを実践していく上で永遠の課題とされるヒューマンエラーについて考えていきます。
 
多くの企業がシステム運用における「標準化」を実践されていますが、それでもヒヤリ・ハットな事例やヒューマンエラーは後を絶ちません。
「間違えてデータを消してしまいました」
「手順通りに作業をしていませんでした」
「想定より時間がかかってしまいオンライン開始が遅延してしまいました」‥など
 
何故なのでしょうか?
 
当事者に理由を聞くと、「無意識に…」とか「…の確認が漏れていました」や「想定外でした」など初歩的なミスを犯しているケースがほとんどです。これらの再発防止策としては、監視の強化や、2名体制での指差し確認等が挙げられますが、非常にコストがかかってしまう方法となってしまいます。
 
今回は、これらのヒューマンエラーに対するアプローチ方法について考えてみたいと思います。
 
ヒューマンエラーの改善策は、過ち(エラー)を犯した人を叱るのではなく、プロセス視点で解決策を導き出す方法については周知のとおりです。しかし、皆さんは何故このような方法を取るのか?この方法は効果的であるのか?を論理的に説明はできるでしょうか。今回はその点にポイントを当てます。
 
ヒューマンエラーの事例には「無意識」や「想定外」という人の感情や思考、認知に起因した事象が少なからず行動に影響を与えています。臨床心理の分野ではABC論理という、個人の認識や考え方の違いが、結果として行動を左右するという考え方があります。このABC論理を応用して、歪んだ物の見方や考え方を軌道修正し、よりよい結果へと導いていくためのアプローチ方法を検討していきます。
 
ABC論理とは、以下の通りです。
 
 

 

 
出来事(A)が結果(C)を引き起こすのではなく、認知の仕方(B)によって結果(C)が変わってくるという論理です。何よりも(B)の存在に気づくことが解決策への第一歩となります。
 
事例で考えてみましょう。
システム運用を10年以上も続けているベテランの担当者がいます。この担当者は、今まで1度もヒューマンエラーを起こしたことが無く、社内の人からは絶大な信頼を寄せられています。そんな担当者がある日、自らのオペレーションミスによって重大な障害を発生させてしまいました。
調査の結果、手順書は準備されていたが手順書に無い作業を実施したことがエラーを起こした直接の原因であることが分かりました。さらに掘り下げていくと、この担当者は過去に何回も手順書に無い同じ作業をしていました。この担当者はシステム変更作業で失敗が無いようにと、手順書に記載されていない方法でさらに事前検証を行ってから適用作業をしていました。しかし、当日は、検証用と本番用を間違えて、「無意識」でコマンドラインを実行し、トラブルを発生させてしまいました。
 
このように、悪気があったわけではなくむしろ良かれと思って実施したことが、結果としてトラブルを起こしてしまったという事例は多いのではないでしょうか。
ABC論理で考えてみると、以下の通りとなります。
A)システムの変更作業をおこなう
B)作業は失敗してはならない、逆に言うと失敗さえしなければ手順にない作業を行っても問題ないという考え方
C)事前検証を行った手順書にない手段を個人の判断で実行→結果、エラーを起こしてしまった
 
手順書を改めても、(B)の認識を改めないと、再発を起こしてしまうことがこの事例で想像がつきます。また(B)は、個人によっても認識が違ってくるので、ヒューマンエラーが発生してしまった場合には、組織としての事例の横展開も重要ですが、個人の歪んだ認識を改めることも必要になってきます。(B)の解釈では、この担当者は絶対に失敗しない理由を、事前検証やいつもやっていることとして正当化しています。論理的には説明のつかない固定観念、感情的な理由が背景にあります。この担当者が「作業は失敗する可能性が高い、失敗すると多大な被害が発生する」と認識していたら、(C)の結果は変わっていたのではないでしょうか。
 
 “河童の川流れ”、弘法も筆のあやまりとことわざにもありますように、業務のプロフェッショナルでも過ち(エラー)を完全に無くすことは難しいと思います。先ずは、エラーの発生自体を防止する為にルーチンワークを機械的に処理することで人が介入するミスの根源を断つための努力を続けつつ、人を介しても一定の品質を維持するために業務プロセスにおける様々な基準を設け、決められた方法や手順によって処理することが必要です。その上で、ヒューマンエラーを減らす取組みとして、今回ご紹介したABC論理を応用した、個人の思い込みや認知を改めるアプローチを継続的に実施していくことで、サービスレベルの向上や運用・保守コストの削減につながればと思います。
  
余談にはなりますが、ABC論理はストレス障害(PTSD)の治療や感情コントロール等のカウンセリングに応用されています。ご参考までにストレスを感じやすいと思う方や、認知行動にご興味を持たれた方に以下の書籍・HPをご紹介します。
 

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