はじめまして、森脇です。
システム運用に携わって22年、この1年の間に多くのエンタープライズ企業で経営方針によるITの見直し、基幹システムの刷新といった動きが活発になっていると感じています。いったいなぜでしょうか?
今回は見直しや刷新が増加する理由と、情報システム部門が乗り越えるべき課題について考察したいと思います。
1990年代にメインフレームからサーバへとダウンサイジングされた基幹システムはプラットフォームが変化しただけでした。また、その後2000年を境に一気に加速した基幹システムのオープン化もWebによってインターフェイスが大きく変化しましたが、ビジネスロジックの変化へと追従するものではなかったようです。つまり、大袈裟な言い方をすれば、今まで刷新してきたシステムの多くがプラットフォームや操作性などの変化のみで、ビジネスの変化に対応したものではなかったようです。
あるお客様では、「システムが対応できないから現場のビジネスが停滞している」という事象の解決を今年度以降の最優先課題にするとも言われていました。
古くからSAPを利用しているお客様が、来年度に稼働環境のみをデータセンタからAWSへ変更されるそうです。変更の理由を聞いてみると、「今のデータセンタでは、安心安定以上のメリットを得られない」とのことでした。例えば、新しい事へと取り組む際、一時的に必要となるCPU能力のスケールアップ・ダウンだけでも時間と費用が掛かり過ぎるとのことでした。単なる維持だけであれば安心安定のデータセンタでの運用が適していますが、今後のビジネスを見据えて、アジリティ性が高く、ローコストローリスクで取り組めることを重要視するという変化が起きているようです。
AWSなどのパブリッククラウドの採用は、既に日本市場においてもキャズムを超えた利用状況です。対して、エンタープライズ企業の情報システム部門が関わったクラウド利用、つまり基幹システムや業務システムでのAWS利用は少ない状況でした。
ところが、近頃この状況が変化してきており、今年度に入ってから前述したような事例を含め、多くの企業が業務システムやERPシステムの稼働プラットフォームとしてクラウド利用を始めています。
基幹システムや業務システムの刷新、新たに採用されるパブリッククラウド、どちらにも共通するのが「変化への強さや柔軟性」です。グローバル化、為替、爆買など、ビジネスの現場は今までも急激な変化へと対応してきました。今度はシステムがビジネススピードや変化へと追従することで更なるビジネスの拡大を実現しようとしているのが現在の「変化」です。この「変化」へ情報システム部門はどのように対応していくのでしょうか?
情報システム部門には長年培った基幹システムに関する安心安定の運用ルールが存在します。5年も10年も大きく変化することなく、長く稼働し続けることを前提に設計された絶対条件の運用ルールです。基本的に、このルールの範囲内においてのみ情報システム部門は新しいことを受け入れてきました。止まることの許されないクリティカルなシステムを維持管理していくために作られたルールですから、「試しに」とか「少しだけ」といった要件には適さないルールです。しかし、現在、ビジネスの現場はこの要件を求めることが多くなってきています。
次回は、情報システム部門が求められる「変化」への対応方法に関して考察してみます。
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