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リーンスタートで仕事のやり方を変えよう

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前回は「TechnologyとLiberal Artsの交差点、つまり、シーズとニーズのぶつかる所にイノベーションが発生する」と言う話をした。イノベーションは必要である。イノベーションというと、大そう考える人もいる。発明か何かをしなければならないと思うかもしれないが、そんなことはない。交差点を見つければいいのだ。
 
AIだ!IoTだ!と言っていてもイノベーションは起きない。また、効率化だけをやっていても、生産性を30%あげることは難しい。だからら、市場に目を向けて小さな交差点を見つけるのだ。Googleは自社の駐車場に止まっている車を見て、自動運転車を思いついた。駐車されている車が稼働すれば、同じコストで大きなお金を産むと考えたのだ。
 
問題は、これを具体的にどうやって見つければ良いのか?である。3月のユニリタユーザ会でそのやり方の概略を話したが、もう少し詳しく話そう。
 
 
「リーン」と言う言葉を知ってるだろうか?英語ではLeanである。辞書を引いてみると、「細い、痩せた、引き締まった」また、「脂肪が少ない、赤身の」とある。最近よく聞く言葉としては、リーンスタートアップ(Lean Startup)と言う使われ方をする。このLeanと言う言葉を私が初めて聞いたのは、Lean Production Systemである。日本語では「リーン生産方式」と呼ばれている、何を隠そう、トヨタの生産方式のことである。
 
 
「無駄を究極に排除した」
 
 
仕組みだ。例えば、在庫の無駄。これは看板方式である。その他、組立工程で部品をあるテーブルから違うテーブルに移動させる工程があれば、その工程にも、排除すべき無駄がいっぱいある。
 
私がこの言葉に出会ったのは、1992年のことである。なぜ覚えてるかって?私が卒業した年だからだ。卒業には成績の最低ラインが決められていて、それを上回らないと卒業出来ない。また、卒業論文を3人の教授の前で説明して合格をもらわないとダメだ。成績も目処がついて、卒業論文もほぼ合格レベルになって、卒業が見えた時に、コンピュータ以外の勉強(Liberal Arts)を少ししておきたいと思い、本屋をうろついていた時に手にした本が
 

The Machine That Changed the World:The Story of Lean Production

 

という本だった。この本には、「日本の企業が車業界にイノベーションを起こした」と書いてあった。MIT(マサチューセッツ工科大学)と言う世界最高峰の大学が認めた、車の生産方式である。

 
ご存知の通り、車は1台づつ手作りで作っていた時代がある。その生産の仕方をぶっ壊したのが、Ford Motorである。フォードはそれまでの作り方を一新して、ベルトコンベアを使って、同じ車種をたくさん作る「マスプロダクションシステム」という方式を産み出した。車1台あたりのコストが安くなる為、価格競争力が高くなった。その最初の車がT型フォードである。この方式でフォードモーターは長く車業界の雄となった。しかし、そのフォードを打ち負かすイノベーションがリーン生産方式であった。
 
その頃(1992年)、日本では、車のデーラーには在庫がなかった。デーラーには展示車と試乗車とが置いてあるだけで、在庫はゼロであった。私は、このやり方が当たり前だと思っていた。しかし、米国のデーラーには、沢山の在庫があった。何故、在庫が置いてあるのか初めて知ったのが、この本だった。その頃は、米国のどの車メーカーも日系の自動車会社のような生産方式はとっていなかったのである。つまり、マスプロダクションを続けていた為、在庫ベースのビジネスをしていた。一方日本の車メーカーは、受注をもらってから車を作る方式をとっていた。(正しくは、中間在庫はあるが、完成させるのが受注をもらってからである)
 
これは日本の消費者の高い欲求が産んだイノベーションと言って良い。高度成長期は誰しもが、
 
「隣のお父さんがセダンを買ったのでうちもセダンが欲しい」
 
であった。しかし、成長が進むと、人間は違うものが欲しくなるものである。つまり、車であればなんでもいいというのではなく、
 
「隣のお父さんがセダンを買うのであれば、うちのお父さんはスポーツカーにしょう」
 
と多くの人は人とは違うものを欲しがる時代に入っていた。そこで必要になったのは、マスプロダクションではなく、マスカスタマイゼーションの時代であった。特に、日本の消費者はこの意識が強かった。「リーン生産方式」は単なる生産革命ではないのである。テクノロジーだけの問題ではない。顧客のニーズが変わったのだから、生産方式も変えてビジネスを作り出した、イノベーションであったのである。つまり、
 
「シーズとニーズがぶつかったところであり、TechnologyとLiberal Artsの交差点」
 
であった。「リーン」という言葉は日本人には親しみやすい言葉である。日本の顧客のニーズはIT業界でも多様化し始めている。1990後半〜2000年代のITはERPの時代であったと言っても過言でない。多くの企業は
 
「隣の会社もERPを入れたので、うちの会社も入れなければならない」
 
であった。ある意味、IT業界のマスプロダクションを見ているようだった。しかし、多くの企業は、「A社とうちはビジネスモデルが違うので、カスタマイズが必要である」と言って、ERPのカスタマイズをした。ご存知の通り、ERPを一度カスタマイズしてしまうと、大変なことが起きる。VUPにかなりのコストがかかってしまう。車のように、
 
「自分のビジネスに合わないシステムは売ってしまって、別のシステムを導入しょう」
 
というのは難しい。但し、会計システムの様な、国の法律や国際基準が影響を及ぼすものは、カスタマイズする必要もあまりなく、ある意味、マスプロダクションによって作られたシステムで十分であったと思う。
 
しかし、2010年を過ぎて、クラウドが進んできて、ITが企業の競争力に使えることがわかり、考えが変化してきた。ITを使って競争をしょうと考えているのに、他社と同じシステムを構築するだろうか?
 
流通業はアマゾンのショッピングサイトにとられた市場をアマゾンと同じITで取り戻そうとはしないだろう。
 
つまり、競争力をつけるためには、マスプロダクションからマスカスタマイゼーションに変化したの様なイノベーションが必要なのである。
 
「隣の企業はITを使ってECサイトを作るのであれば、我々はITを使ってコミュニティサイトを作ろう」
 
と言った別次元の交差点を見つけないとダメなのである。
 
そして、リーンスタートアップは、日本が産んだコンセプトをもとにしているのだから、
 
「日本の競争力を取り戻す為に、戦略的にITを使っていこう」
 
という考え方を実現する為の方法論として考えてみてはどうだろうか?
 
 
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