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データセンターサービスのトレンドと ITサービスマネジメントの 新たなるビジネス機会を探る(前編) SIerとCIerのデータセンターの違いと求められる運用要件とは?

データセンター

1990年代に建てられたデータセンター(以下DC)の老朽化対策。金融機関を中心に大手企業が競って建設した自社専用のDCは、ここ数年内に建物の大規模修繕、設備の更改時期を迎え、多額の設備投資をして継続利用するか、あるいは自社DCの利用を諦め、専業者の他社DCを利用するかの選択を迫られている。一方で、クラウド型のDCも登場して久しい。しかし、この2種類のDCは利用形態や想定する顧客ターゲットが異なる。

今月から2回に渡って、この2つのDCそれぞれの特徴から、顧客のニーズ、事業者の提供するサービスの違いについて整理するとともに、それぞれのDCに求められる運用要件について考察する。

DCの歴史

DCは、これまでのコンピュータの技術革新、利用形態の変化に併せて変遷してきました。まずは、今までの歴史を簡単に振り返ることにしましょう。

1980年代、企業がコンピュータを活用し、業務のシステム化による省力化、自動化を図るために基幹システムの構築が盛んに行われたことにより、システムには、重要なデータが格納され、企業にとってミッションクリティカルな存在となりました。そのため、システムの信頼性、安定性をより高いレベルで確保するとともに、コンピュータ機器そのものを外部からの物理的な侵入や天変地異などによる災害から守るために、安全な場所に設置することが必要となってきました。そして、地盤のよい土地に堅牢なコンピュータ専用の建物(すなわちDCです)を、金融機関をはじめとする大手企業が競って建設するブームが起こり、この流れは1990年頃まで続きました。当時はユーザ企業がIT資産を自前で調達し資産として保有していたように、DCも自前で建設し保有していた時代でした。

DCビジネスの台頭

2000年前後からインターネットビジネスの拡大に伴ってインターネットのアクセスポイントの用途としてDCを専業とする事業者が登場し、DCビジネス市場が急拡大しました。そして直後のITバブル崩壊によって、ユーザ企業が保有する基幹系システム向けのアウトソーシングサービスの受け入れ先として利用用途が拡大していきました。例えば、地銀の共同センター化の動きもこの一例です。そして、2011年に起きた東日本大震災を契機に、バックアップサイトとしての用途が見込まれ、さらに成長を遂げてきました。 

そして、昨今の大きなテーマがDCの老朽化への対応です。1990年前後の建設ブーム当時に建てられたDCは、2010年以降にその建物だけでなく、受変電設備、非常用自家発電設備などの電気系設備を含めて多くの大型設備が耐用年数超えを控え、その更新、大規模修繕が必要な時期にきています。一般に老朽化対策のための費用は、少なくとも数十億から百億円以上を必要とすることから、ユーザ企業各社は自前のDCの継続保有を諦め、IT資産を外部のDC事業者に預ける動きも活発化しているわけです。

このような背景から、国内のDCビジネスは現在も年率6.7%の成長を続けており、2016年度のその市場規模は、1兆953億円と言われています。
(出典:IDC Japan株式会社 国内データセンターサービス市場予測
 http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20161207Apr.html

クラウド型DCの台頭

アイネット社データセンター

一方で、近年はクラウドコンピューティング、具体的にはAWS、Azure、Google、 IBM Bluemixなどの外資系に加えて、GIO(IIJ)、クラウド・エヌ(NTTコミュニケーションズ)、ニフティクラウド、Next Generation EASY Cloud(アイネット)等の国内CIer( クラウドインテグレータ)の台頭が既存のDCビジネスにも影響を与え始めています。

本稿では、この2種類のDCに対して誤解を恐れずに敢えてSIer型DC、CIer型DCと呼ぶことにします。この2種類のDCの違いを整理しました。(図1参照)

このように利用形態や想定する顧客ターゲットが異なるのです。

SIer型DCとCIer型DC

SIer型DCの運用要件とは

従来は、ユーザ企業が自社のDCで基幹システムを稼働させ、情報システム部門あるいは情報システム子会社がシステム運用をすべて担当していました。そこで、企業のシステムを自社のDCから外部のDCに移設した場合にシステム運用はどのような影響を受けるのでしょうか? 外部のDCを利用する場合、その事業者との間でシステム運用に関する役割分担が生じます。当然、外部のDCにどの範囲を委託するのかによってその役割分担は変わります。基幹システムの業務アプリケーションの保守運用までのすべてを外部に委託するフルアウトソーシングの形態から、DCのスペースおよび設備を借り、IT資産は自社で保有するハウジング契約までその形態はさまざまです。

ここではまず、ハウジング契約の場合について考察することにします。

1) リモート運用環境の構築

外部のDCを利用する場合、運用拠点とDCを物理的に分け、遠隔地からネットワーク経由でリモート運用を行う形態をとる場合が多く見られます。自社のDC内に運用監視センター(ここではコマンドセンターと呼ぶことにします)がある場合においてもコンピュータ機器は別階あるいは別棟に設置されているなど個々のシステムの運用はネットワーク経由で実現されており、リモート運用に必要なツール、仕組みはすでに整備されていたケースがほとんどであると思います。しかし、すぐにコンピュータ機器を直接操作できる環境にある場合と離れた外部のDCに設置されている場合とでは、万一、機器に何か問題があった場合の対応手順が異なります。

よって、実施担当者の棚卸しと見直しも必要です。すなわち、リモートから実施する運用業務と機器の対面で実施する担当者を分けるなど、現行の運用業務の洗い出し、必要な仕組み、手順、委託先との役割分担を整備する必要があります。通常、現地でのオペレーションはDC事業者へ委託する必要があることから委託業務の手順の明確化が必要です。また、最近は、災害対策用に複数のDCにコンピュータ機器を設置し、万一の場合には本番システムをメインサイトからバックアップサイトのDCに切り替えて業務の継続性を担保する構成をとる企業も多くみられます。

このようなシステム切り替えのための運用基盤、手順、体制に関してもDCから離れた場所にあるコマンドセンターから実施できる仕組みをあらかじめ構築しておく必要があるわけです。(図2参照)

DCとコマンドセンターを論理的に分離

2) SLA(Service Level Agreement)に基づく委託先管理の実施

昨今、内部統制におけるITの位置付けがSOX、COSOフレームワーク、FISCの安全対策基準等で明確に規定されるようになってきました。その中でも、特に外部委託先管理についてはより厳しい基準に変わってきていることから、外部のDCを利用する場合においても、SLAを取り決めDC事業者との間で委託する業務について厳密に定義する必要があります。

また、日々の運用業務がSLAに基づいて正しく実施されていることを証明する仕組みも必要となります。運用業務の証跡保存管理、定期レポートなどがこれに該当します。

3) 構成管理がより重要になる

外部のDCを利用することで構成管理の重要性も増します。一般にDCへの入出、IT機器の搬出入は、委託先の事業者のDC運営ポリシーに従う必要があります。したがって、例えばDCからIT機器を搬出あるいは搬入する場合は、その都度、申請が必要となる場合があり、そのためには機器の構成管理情報が必要になります。

また、昨今は仮想化技術を導入することでシステムの柔軟性が高くなる半面、構成情報の管理項目が増えると同時にその鮮度を保つことが難しくなっています。解決策の鍵は、構成管理ツールの活用と、機器の搬出入における手順の電子ワークフロー化(申請、承認)です。

4) 運用業務プロセスの自動化、標準化、可視化

対象となるシステムの数、規模、そしてそこに携わる組織や人員が増えるほど、システム運用がより複雑になりがちです。こうした状況で人為ミスを減らし信頼性の高い運用業務プロセスを構築するためには、運用の自動化、標準化をより推し進めることが重要です。

すなわち、手作業をできる限り排除しシステム化する、標準的な運用プロセスを定義し運用の受け入れ基準を明確にすることです。例えば、現地での機器対面操作が必要なテープ運用や、ハードウェアのインジケータ確認などの目視による監視運用をなくすことや、障害時に実機でなければフォローできないシステム構成を避け、リモートアクセス環境を整備することなどが挙げられます。

次号の後編では、引き続きCIer型のDCの運用要件や、現状の課題と問題点について考察し、最後にその解決策としてユニリタの目指すマネージメントサービスについてご紹介する予定です。

担当者紹介

渡辺 浩之

執行役員
デジタルサービス本部長
兼 コーポレート企画室長
渡辺 浩之

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